【調剤薬局の法人化】保険調剤の事業税の罠。株式会社にした瞬間に消える優遇措置とは?
「売上も順調に伸びてきたし、そろそろウチの薬局も株式会社にしようか」
そう考えている調剤薬局のオーナー経営者の方は多いと思います。
しかし、ちょっと待ってください。調剤薬局が個人事業から株式会社などの法人にするとき、多くの経営者が見落としがちな税金の落とし穴があります。
それが都道府県に納める事業税です。
「薬局のメインである保険調剤は、医療と同じだから事業税の優遇があるのでは?」と思われがちですが、実は法人化(株式会社化)した瞬間に、その優遇が一切使えなくなるという法律の罠が存在します。
今回は、個人と法人でここまで違う、調剤薬局の事業税の仕組みを分かりやすく解説します。
調剤薬局の事業税はどう計算される?
まず大前提として、調剤薬局(薬剤師業)は法律で定められた「第一種事業」に該当するため、基本的には事業税の課税対象です。お店で売るOTC医薬品やサプリメントなどの利益(一般物販分)には、個人・法人を問わず普通に事業税がかかります。
違いが出るのは、売上の大半を占める「保険調剤(処方箋)」から生まれた利益(所得)の取扱いです。
| 経営の形態 | 保険調剤(処方箋)の利益 | OTC医薬品(一般薬)などの利益 |
| 個人事業主 | ❌ 非課税(かからない) | ⭕️ 課税(通常5%) |
| 株式会社など(法人) | ⭕️ 課税(全額かかります!) | ⭕️ 課税 |
個人の場合:保険調剤の利益は「非課税」
個人事業主として薬局を経営している場合、お医者さんのクリニックと同様に、公共性の高さから「社会保険調剤(保険調剤)にかかる所得は非課税」と定められています。
確定申告の際にも、全体の利益から保険調剤分の利益をきっちり差し引いて計算するため、事業税の負担はかなり低く抑えられます。
法人(株式会社など)の場合は保険調剤の利益も全額課税
しかし、株式会社や合同会社といった法人組織にした途端、ルールは激変します。
なんと、保険調剤から出た利益に対しても、法人事業税が1円単位までガッツリ課税されるようになるのです。
「病院やクリニックは、医療法人になれば法人でも保険診療分は非課税でしょ?」と思われるかもしれません。その通りです。しかし、調剤薬局は法律上「医療法人」を設立することができません。 選択肢が株式会社などの一般法人しかないにもかかわらず、一般法人はこの非課税の特例の「対象外」とされているため、優遇措置がゼロになってしまうのです。
法人化で「思ったより税金が減らない」という罠
個人から法人になると、所得税から法人税に変わることで税率が下がり、節税になるケースは多いです。
しかし、調剤薬局の場合は「今までタダ(非課税)だった保険調剤の利益に、いきなり法人事業税がかかり始める」という強烈なパンチが飛んできます。
さらに、これだけではありません。
法人化によって事業税が全額課税になったとしても、今度は「消費税」の計算(個別対応方式など)のために、家賃や光熱費、スタッフの人件費といった共通経費を「保険調剤(消費税非課税)」と「OTC(消費税課税)」で按分(割り振り)する複雑な計算は残り続けます。
結果として、「事業税の優遇は消えて丸々払わされるのに、経費の按分計算の手間や、それによる税務上のデメリット(他の税金が下がりにくくなるリスク)はそのまま残る」という、薬局経営者にとって非常に不利な二重苦に陥ってしまうことがあるのです。
調剤薬局の法人化は事業税の増加分も含めてトータルで判断が必要
調剤薬局の法人化は、組織の拡大や採用、相続対策において非常に強力な選択肢です。しかし、お医者さんの感覚で「保険調剤だから大丈夫」と高をくくっていると、想定外の事業税の負担に驚くことになります。
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個人事業のまま、保険調剤の非課税メリットを活かして手残りを増やすべきか?
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事業税の負担増(コスト増)を上回るメリットを求めて、株式会社化に踏み切るべきか?
この見極めには、現在の処方箋枚数や利益率を踏まえた、非常に緻密な税務シミュレーションが必要です。
また調剤薬局を経営するにおいては、保健所の許可や社会保険など法人の方が良い側面もあります。
税務面だけでなく経営や従業員雇用に関することなどトータルで判断が必要です。
ファーマシー会計事務所では調剤薬局特有の事業税ルールや法人化の損益分岐点を熟知した専門家が、オーナー様の経営をサポートします。
「法人化を検討しているけれど、トータルの税金がどう変わるか知りたい」という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。