個人で薬局を開業する薬剤師の先生へ|青色申告特別控除は令和9年分から最大75万円に
個人で薬局を開業すると、税金の手続きも自分で選ぶことになります。その中でも最初に決めておきたいのが「青色申告」です。令和9年分(2027年分)からは、青色申告特別控除の内容が見直され、最大75万円になります。開業を考えている先生に向けて、制度の変更点と、薬局ならではの注意点をまとめました。
なぜ、開業時に青色申告を選ぶのか
個人事業として薬局を開業した場合、確定申告は「青色申告」か「白色申告」を選びます。青色申告を選ぶと、所得から最大で数十万円を差し引ける「青色申告特別控除」を受けられます。開業初年度は設備投資で利益が小さくなりがちですが、2年目以降に利益が出てきたとき、この控除が税負担を軽くしてくれます。
令和9年分から変わること
令和8年度税制改正により、令和9年分以後は、控除額が10万円・65万円・75万円の3区分になります。
- 75万円:複式簿記で記帳し、期限内にe-Taxで申告し、さらに優良な電子帳簿の保存などの要件を満たす場合
- 65万円:複式簿記で記帳し、期限内にe-Taxで申告する場合
- 10万円:簡易な帳簿の場合や、書面で申告する場合
これまで書面で提出しながら55万円の控除を受けていた方は、令和9年分から10万円に下がります。これから開業する先生は、最初からe-Taxでの申告を前提に準備するのが安心です。要件の細かい内容や必要な届出は、国税庁の最新の案内でも確認してください。
薬局ならではの記帳の注意点
薬局の帳簿には、他の業種にはない特徴があります。
1つ目は、調剤報酬の入金のタイミングです。保険請求分は、調剤した月から約2か月後に入金されます。実際に入金された日ではなく、調剤した月の売上として計上するため、売掛金の管理が欠かせません。
2つ目は、医薬品の在庫です。年末には期末棚卸をして在庫金額を確定する必要があります。仕入れた薬が、そのまま経費になるわけではありません。
3つ目は、消費税の区分です。保険調剤報酬は非課税ですが、一般用医薬品や自費の売上は課税になります。日々の帳簿で、課税と非課税を分けて記録しておくことが大切です。
調剤機器や内装などの設備投資は、一度に経費にならず、数年に分けて経費にする(減価償却)ものが多くなります。利益は出ているのにお金が残らない、という状態にならないよう、早めの資金計画が必要です。
開業1年目にやっておくこと
- 開業届と、青色申告承認申請書を期限内に提出する(新規開業の場合は、開業日から2か月以内が目安です)
- e-Taxを使える環境(マイナンバーカードなど)を整える
- 電子帳簿に対応した会計ソフトを選ぶ
- 保険請求の売上と入金を、毎月確認する仕組みをつくる
- 年末の在庫確認の段取りを決める
将来の法人成りも見据えて
利益が大きくなってきたら、個人から法人に切り替える「法人成り」が選択肢になります。青色申告特別控除は個人事業主の制度なので、法人にすると適用されません。個人のうちに帳簿をきちんと整えておくと、法人成りのときもスムーズです。
まとめ
- 青色申告特別控除は、令和9年分から10万円・65万円・75万円の3区分になる
- 書面申告の55万円控除はなくなるため、e-Taxでの申告を前提に準備する
- 調剤報酬の入金時期、在庫、消費税の区分に注意して記帳する
薬局の会計は、専門的な判断が多い分野です。開業の準備段階から税理士に相談しておくと、後からの手戻りを減らせます。
※本記事は令和8年10月時点の情報です。最新の要件は、国税庁の案内や所轄の税務署でご確認ください。