調剤薬局の白衣・制服代は会社が負担すべき?自腹購入・自宅洗濯の取り扱いを税理士が解説
「スタッフに白衣を自分で買ってもらっているんですが、問題ありますか?」「自宅で洗濯してもらっているので、洗濯代として月500円渡しているんですが、税務上どう処理すればいいですか?」
調剤薬局を経営されている先生から実際によく聞かれる質問です。白衣・制服の費用負担と洗濯の取り扱いは、労働基準法と税務の両方にまたがる問題です。それぞれ正しく理解しておきましょう。
調剤薬局における白衣着用の位置づけ
まず前提として、調剤薬局における白衣着用の意味を確認しておきます。
薬機法上、薬剤師・登録販売者・一般従事者はそれぞれ衣服などで区別することが望ましいとされています。一般従事者が白衣を着用すると購入者から見て紛らわしいとして避けるべきとも明記されています。
つまり白衣の着用は単なる見た目の問題ではなく、業務上の必要性があるという点が重要です。この前提が、費用負担の考え方に大きく影響します。
白衣・制服代は誰が負担すべきか
①会社が購入して支給する場合(最もシンプル)
会社が白衣・制服を購入してスタッフに支給する場合、その費用は「福利厚生費」または「消耗品費」として経費になります。スタッフへの給与課税は不要です。最もトラブルが少なく、税務上もシンプルな方法です。
②スタッフが自腹で購入する場合
スタッフに白衣・制服を自腹で購入させることは、一定の条件を満たせば違法にはなりません。ただし以下の条件が必要です。
採用時に労働条件として明示することが必要です。労働基準法第15条では、採用時に「労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項」を明示する義務があります。事前に説明なく購入を強制することは労働条件の明示義務違反になります。
就業規則への記載も必要です。常時10人以上の労働者を使用する場合は、就業規則にその旨を記載して労働基準監督署への届出が必要です。
給与からの天引きには別途労使協定が必要です。「購入費用を給与から引いておくね」というやり方は、労使協定なしには労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)に違反します。
なお、スタッフが自腹購入した場合は白衣の所有権はスタッフ個人にあるため、退職時に返却させることができません。薬局名や薬局ロゴが入った白衣が退職後も元スタッフの手元に残るリスクもあります。こうした観点からも、会社が支給する方が無難です。
③スタッフが購入した費用を実費精算する場合
スタッフが立替払いした白衣代を会社が実費精算する方法もあります。領収書をもとに精算すれば給与課税は不要で、会社の経費になります。
自宅洗濯の取り扱い
白衣を自宅で洗濯してもらうことは会社が強制できません。会社が着用を義務づけている制服の洗濯は、本来会社が責任を持つべき業務上の必要経費です。自宅洗濯を強制することは、スタッフに一方的な負担を強いることになります。
クリーニング業者に依頼して会社が費用を負担するか、洗い替えを含めて十分な枚数を支給するのが望ましい対応です。
洗濯手当として月数百円を現金で渡す場合の税務処理
自宅洗濯してもらう代わりに洗濯手当として月500円程度を現金で渡しているケースがありますが、税務上の取り扱いには注意が必要です。
原則として、現金で手当を支給する場合は給与として課税対象になります。たとえ実費相当であっても、現金支給は給与課税が原則です。
ただし実務上は、業務上の必要性が明確で金額が社会通念上相当な範囲(月数百円程度)であれば、非課税として処理しているケースもあります。金額が少額であっても、グレーゾーンであることは認識しておく必要があります。
より確実に非課税にするためには、会社がクリーニング業者に直接支払う形にすることです。会社が業者に払う場合は給与課税されません。
正副(2着目)を購入させる場合
1着目は会社支給で2着目以降はスタッフ負担というケースもあります。この場合も、採用時の労働条件明示と就業規則への記載が必要です。「1着目は支給、2着目以降は自己負担」というルールを明確にしておかないとトラブルの原因になります。
また2着目を自腹購入させる場合、スタッフが確定申告で特定支出控除として経費計上できる可能性があります(給与所得者の特定支出控除)。ただし一定の条件があるため、スタッフから質問があった場合は税理士に確認するよう促すとよいでしょう。
まとめ・おすすめの対応
調剤薬局の白衣・制服に関する費用負担と洗濯の取り扱いを整理するとこうなります。
白衣・制服は会社が購入して支給するのが最もシンプルで労務トラブルも少ないです。どうしてもスタッフ負担にする場合は採用時の明示と就業規則への記載が必須です。自宅洗濯の強制は避け、クリーニング業者への直接支払いか十分な枚数の支給で対応するのが望ましいです。洗濯手当を現金で渡す場合は給与課税のリスクがあることを認識しておく必要があります。
「うちの薬局の対応が適切かどうか確認したい」という先生は、お気軽にご相談ください。