調剤薬局専門の税理士ファーマシー会計事務所

第4回:調剤薬局の給与と役員報酬の設定 (はじめての薬局税務シリーズ)

薬局経営における給与と役員報酬の重要性

開業間もない調剤薬局では特に薬剤師である経営者本人が役員報酬を受け取り、数名のスタッフに給与を支払う形が一般的です。
給与や役員報酬の設定は、税務処理の正確さと資金繰りの安定に直結するため、早い段階からの理解が欠かせません。

役員報酬の基本ルール

  • 役員報酬は、事業年度開始から3か月以内に金額を確定しなければなりません。

  • 毎月同額で支給する「定期同額給与」が原則で、途中で金額を変えると損金不算入になるリスクがあります。

  • 法人税計算上は経費として認められるため、適切に設定することで節税効果もあります。

👉 開業初期は免税事業者であることが多いため、消費税の影響は小さいですが、所得税・法人税の計算には大きく関わる部分です。

スタッフ給与の税務処理

  • パート・アルバイト中心の薬局では、社会保険や雇用保険の加入基準(月20時間以上勤務など)に注意

  • 扶養内で働きたいスタッフが多く、勤務時間の調整と給与計算の正確さが必要

  • 給与は源泉徴収を行い、年末調整で精算するのが基本

👉 小規模薬局では「スタッフ数名でも給与計算は立派な税務処理」であり、ミスがあると税務調査のリスクになります。

家族従業員給与の扱い

  • 個人事業の場合 →「専従者給与」として処理

  • 法人の場合 →「役員給与」または「従業員給与」として処理

  • 経費にするためには、勤務実態と給与額の妥当性が必要

税務調査では「勤務の実態があるか」「給与額が相場水準か」がよく確認されます。

役員報酬と配当の違い

  • 役員報酬:経費として法人の利益を減らせる

  • 配当:法人の利益処分であり、経費にはならない

  • 開業間もない薬局では、資金繰りを安定させるために「役員報酬」を中心に設計するのが基本です。

税務上の注意点

  1. 役員報酬は定期同額が原則 → 途中での増減は原則認められない

  2. 給与支払報告書・源泉徴収義務 → 毎月の納付や年末調整を怠らない

  3. 社会保険の加入義務 → 常勤役員や一定時間以上勤務するスタッフは対象

まとめ

  • 開業初期は免税事業者でも、給与・役員報酬の設定は所得税・法人税に大きく影響

  • 役員報酬は生活費と税務バランスを踏まえて設定

  • スタッフ給与は社会保険・源泉徴収・扶養の基準を押さえる

  • 家族従業員給与は実態と金額の妥当性が重要

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