調剤薬局の税務調査 やさしくわかるポイントと準備法

税務調査というと「突然やってきて全部調べられる怖いもの」というイメージを持つ方も多いですが、ほとんどは事前に連絡のある通常の調査です。
調剤薬局は、「税務調査に入られづらい」とか「先輩の調剤薬局は開業〇〇年なのに入ったことがない」と聞くこともあるかもしれません。
それには理由もある(後述します)のですが、近年は保険調剤だけ扱う調剤薬局だけでなく、令売薬局やオンライン診療などによって自費の収入も増えている調剤薬局も増えており税務署としてもその動向には関心があるものと思いますので以前よりも税務調査になる可能性は高まっていると言えます。
税務調査の流れは?
一般的な調査は、事前に税務署から日程や場所の連絡があります。
税理士がいる場合は税理士に連額があり税理士が日程調整を行います。
当日は、午前中に事業や経理の説明、午後に帳簿や書類の確認が行われることが多いです。
規模によっては1日で終わることもあれば、2日ほどかかる場合もあります。
一方、悪質な脱税が疑われる場合には、令状を持った調査官が予告なく訪れる「強制調査」になることもありますが、これはまれです。
よく確認されるポイントと対策
チェックされやすい項目 | どんな内容か | 日ごろの対策 |
---|---|---|
消費税の還付申告 | 実態のない取引で還付を受けていないか | 請求書や振込記録を確実に保管 |
人件費の計上 | 実際に働いていない家族に給与を払っていないか | 契約書や勤務記録を整備 |
在庫管理 | 棚卸数や評価額が届出通りか | 毎年同じ方法で棚卸しを行う |
交際費 | 私的な支出を経費にしていないか | プライベートと業務の支出を分ける |
現金管理 | レジ残高と銀行入金額に差がないか | 日計表で金額を管理し記録 |
調査の時の準備と心構え
- 必要書類(総勘定元帳、領収書、請求書、契約書、賃金台帳、タイムカードなど調剤薬局に関する書類すべて)はあらかじめそろえておく
- 税理士がいる場合は、気になる点などは事前に確認しておく
- 調査官の質問には正確に答える(わからないときは無理に答えない)
- 調査後に修正申告や意見交換の場が設けられる場合があるので、税理士と連携して対応する
税務調査に入りやすいケース
冒頭でも申し上げた通り調剤薬局は税務調査になりづらいイメージを持たれている薬剤師の先生がも多いかもしれません。
それには理由があり、保険調剤の場合は保険調剤収入が大部分ですから支払基金からの支払が収入の大部分を占めるため、税務署において通帳を事前照会して売上の概算出して税務署に提出された決算書あっているかどうか、税務調査する前にわかってしまうというため税務調査になり辛いためです。
また消費税の申告もない(保険調剤のみで消費税納税義務がない)ため見る部分が多くないということもあります。
ですが、近年はオンライン診療によって調剤薬局でも自費売上や令売薬局のように大部分が現金収入を占めるケースもありますので、税務署側でもその動向に関心をもっています。
保険調剤のみであってもそういった収入があるのではないかということで税務調査ということもあるのではないでしょうか。
なお、一般的には以下のようなケースが税務調査になりやすいといわれます。
-
急激に売上が増加した又は減少した
-
業界平均より利益率が低い
-
同業種と比べて突出した経費がある(多額の交際費など)
-
個人事業の場合に毎年赤字が続いている
- 会社設立後3年以降、前回の税務調査から3年以上たっている
まとめ
税務調査は、正しく準備していれば過度に恐れる必要はありません。
日々の帳簿管理と証拠書類の保管を習慣にし、いざ連絡があっても落ち着いて対応できる体制を整えておきましょう。
調剤薬局は特有の経理ポイントが多いので、専門知識のある税理士と一緒に備えるのが安心です。