調剤薬局の多店舗展開と1店舗集中はどっちがよい?薬剤師の採用難時代における正解とは?
「隣の駅に良い物件が出たから、2店舗目を検討してみないか?」
「せっかく独立したのだから、店舗数を増やして会社を大きくしたい」
薬局経営が軌道に乗ると、誰もが一度は「多店舗展開」の誘惑に駆られます。
しかし、度重なる薬価改定や処方箋枚数の減少、そして何より深刻な「薬剤師不足」が続く現在の経営環境において、安易な規模拡大は命取りになりかねません。
今回は、数多くの薬局の財務諸表を見てきた税理士の視点から、あえて規模を追わず「オーナー現役の1店舗集中」がなぜ今の時代に最強の生存戦略と言えるのか、その理由と具体的な財務・出口戦略を徹底解説します。
安易な多店舗展開は危険
多店舗展開の最大の罠は、「売上は2倍になっても、利益は2倍にならない(むしろ減る)」という現象が起きやすい点です。
2店舗目を出すとなると、以下のコストとリスクが階段状に跳ね上がります。
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莫大な採用コスト:もう1人、管理薬剤師クラスを雇う必要があり、高額な紹介料(年収の60%など)が発生する。
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固定費と借入金の負担:新たな店舗の家賃、内装工事費用、什器設備投資が重くのしかかる。
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キャッシュフローの圧迫:調剤薬局はレセプト入金が2ヶ月後になるため、新店舗の「薬の仕入れ(医薬品卸への支払い)」が先行し、本店のキャッシュを激しく食いつぶす。
万が一、2店舗目の処方箋枚数が計画を下回ったり、雇った薬剤師がすぐに辞めてしまえば、1号店の利益まで吹き飛び、共倒れになるリスクがあります。
組織マネジメントの現実
人材確保が難しい今、オーナーが現場を離れて「人に任せる経営」をしようとすると、メンタルをすり減らすことになります。
なぜなら、経営者と勤務薬剤師の間には、決定的な「覚悟と責任の差」があるからです。
経営者であるあなたの仕事への熱量・責任感を10とした場合、勤務薬剤師は6くらいに考えておくのが、組織を健全に保つリアルな基準です。
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オーナー(10の理由):売上が落ちても、薬価が下がっても、毎月の家賃やスタッフの給与を「自分の資産を削ってでも支払う」リスクを背負っている。自分事という圧倒的なモチベーション。
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勤務薬剤師(6の理由):時間と労働力を提供して給与をもらう立場。経営リスクを背負う必要はなく、極論、店が潰れても次の職場を探せばいい。仕事に対するモチベーションの限界。
オーナーがスタッフに自分と同じ10の熱量を求めてしまうと、「なぜそこまで言われないと動かないのか」と終わりのないストレスを抱え、結果として離職を招きます。
最初から勤務薬剤師は自分の6割が限界と割り切り、自分が現役として現場の主導権を握る1店舗経営こそが、最も離職が少なく、最もトラブルの少ない安定した形のです。
1店舗集中の財務メリット
「自分が動けばなんとかなる体制」を敷き、1店舗にリソースを集中させることには、圧倒的な財務メリットがあります。
人件費と採用コストの完全コントロール
スタッフに多くを求めず、ルーティンワーク(6の力でも回る仕事)は徹底的にマニュアル化します。
一方で、「かかりつけ同意の取得」「在宅医療の開拓」「エリア支援体制加算の取得」といった高付加価値な「10」の仕事は、オーナー自身が引き受け、その分の利益を役員報酬として自分が総取りします。
「人が採れないから拡大できない」のではなく、「無駄な採用コスト(紹介料)を1円も払わずに、高い利益率をキープしている」と捉えるのが、これからのスマートな経営です。
会社は小さく、個人は豊かに資産をシフト
多店舗化すると、会社を大きくするための「内部留保(会社の貯金)」を過剰に残す必要がありますが、1店舗集中であればその必要はありません。 法人の利益を無理に会社に残さず、毎期の利益は税負担を抑えながら「オーナー個人のポケット」に効率よく移していきましょう。
筋肉質な強い1店舗経営が正解のひとつ
処方箋枚数の減少や度重なる薬価改定が進む現在、規模の拡大を追う「規模の経済」は大手チェーンの戦い方です。
個人・中小の薬局オーナーが取るべき真の戦略は、「人材採用に振り回されず、地域に根ざし、自分がコントロールできる範囲で、財務基盤が盤石な1店舗を創り上げること」です。
他人に期待して裏切られるコストをゼロにし、自分の努力が100%利益として返ってくる環境を作る。
これこそが、これからの独立薬局の勝ちパターンです。
「今の店舗の利益を、最も税金の負担を少なく個人に残すにはどうすればいいか?」
「自分の薬局の最適な役員報酬の金額を知りたい」
そう思われた方は、ぜひ一度ファーマシー会計事務所へご相談ください。
貴局の財務状況に合わせた、最適なシミュレーションをご提案いたします。