調剤薬局専門の税理士ファーマシー会計事務所

調剤薬局経営者が「小規模企業共済」以外で検討すべき退職金準備

薬局オーナーにとって、節税しながら自分の退職金を積み立てられる「小規模企業共済」は、いわば経営者の必須科目です。しかし、月額最大7万円という枠だけでは、将来のゆとりある生活や、事業承継時の資金としては心もとないのも事実です。

「もっと積み立てたいが、これ以上固定費を増やすのはリスクではないか?」 「処方箋枚数の減少や薬価改定が続く中で、最適な拠出額はどう決めるべきか?」

今回は、小規模企業共済をベースにしつつ、次に検討すべき「第2・第3の退職金準備」と、その判断基準を税理士の視点で解説します。

1. 攻守のバランスをどう取る?「固定費(掛金)」の判断基準

処方箋枚数の変動や2年に1度の薬価改定など、薬局経営は外部要因に左右されやすいビジネスです。退職金準備のために無理な掛金を設定し、手元のキャッシュ(現預金)が枯渇しては本末転倒です。

判断の目安として、以下の**「3つの指標」**をチェックしてみてください。

  • 現預金の余裕度:最低でも「月商の3ヶ月分」のキャッシュが手元に残っているか。

  • 掛金の柔軟性:業績が悪化した際に、ペナルティなく「減額」や「停止」ができる制度かどうか。(小規模企業共済やiDeCoは柔軟ですが、一部の民間保険などは注意が必要です)

  • 投資対効果(ROI):単なる貯金ではなく、「所得税・住民税・社会保険料」がどれだけ安くなるかという「節税利回り」で考える。

2. 検討すべき3つの代替案

小規模企業共済の「月7万円」の次の一手として有効な選択肢は以下の3つです。

① 企業型確定拠出年金(企業型DC)

iDeCoの「会社版」です。役員報酬の一部を掛金に充てる「選択制DC」を導入すれば、所得税・住民税だけでなく、社会保険料の削減にもつながります。薬剤師の採用・定着のための福利厚生としても非常に強力です。

② 経営セーフティ共済(倒産防止共済)

年間最大240万円(累計800万円)まで全額損金で積み立てられます。本来は連鎖倒産防止の制度ですが、40ヶ月以上納付すれば解約手当金が100%戻るため、法人の利益が出ている時期に積み立て、引退時の「退職金」の原資に充てるという戦略が有効です。 ※2024年10月の改正により、解約後2年間は再加入時の損金算入ができなくなったため、より計画的な運用が求められます。

③ 新NISAを活用した「個人資産」の形成

あえて「経費」にこだわらず、役員報酬として受け取った後の「個人マネー」を非課税枠で運用する方法です。法人のキャッシュフローに影響を与えず、かつ必要な時にいつでも換金できる「流動性の高さ」が、変化の激しい薬局業界では大きなメリットになります。

3. 2026年からの「退職金増税」と「10年ルール」の壁

ここで注意が必要なのが、近年の税制改正です。 特に2026年からは、退職所得控除の計算が見直され、長年勤めた後の「一括受取」に対する優遇が一部制限される動きがあります。

また、小規模企業共済、確定拠出年金、役員退職金をそれぞれ別の時期に受け取る際、**「前年以前の合算期間(いわゆる10年ルール)」**を考慮しないと、せっかくの退職所得控除枠が削られてしまうリスクがあります。

「いつ、どの制度から、いくら受け取るか」という出口のシミュレーションなしに積み立てを行うのは、地図を持たずに航海に出るようなものです。

まとめ:あなたの薬局に最適な「積立比率」を

「これ以上、固定費を増やしても大丈夫か?」という不安への答えは、貴局の財務状況と、将来のビジョン(多店舗展開するのか、一代で終えるのか)によって異なります。

ファーマシー会計事務所では、単なる節税提案にとどまらず、薬局経営のキャッシュフローを圧迫しない「持続可能な退職金設計」をサポートしています。

「自分の場合はいくらまでなら安全か?」と気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。

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