調剤薬局専門の税理士ファーマシー会計事務所

調剤薬局におけるパート・アルバイト給与計算のポイント

1. 所得税の源泉徴収

他で働いていない人

  • パート・アルバイトが「扶養控除等申告書」を提出している場合、月額8万8,000円(令和7年現在の給与所得控除後の判定基準)程度までなら源泉徴収不要となります。

  • 調剤薬局だけで働いている場合は、ほとんどが「甲欄」で計算します。

他で働いている人

  • 既に別の勤務先に扶養控除等申告書を提出している場合、薬局では提出できません。

  • この場合は**「乙欄」で源泉徴収」**を行います。乙欄は一律で高めの源泉がかかるため、年末調整や確定申告で精算されます。

2. 労働保険・社会保険の適用

  • 労働保険(労災・雇用保険)

    • 労災保険は1人でも雇えば強制適用。

    • 雇用保険は「週20時間以上」「31日以上の雇用見込み」で加入義務あり。

  • 社会保険(健康保険・厚生年金)

    • 週30時間以上勤務で原則加入。

    • 一定規模(従業員101人以上)の薬局では、週20時間以上でも加入要件を満たす場合があります。

3. 就業規則は必要?

  • 常時10人以上の従業員を使用する場合は就業規則の作成・届出が義務です。

  • 10人未満でもトラブル防止のために「雇用契約書+簡易規程」を用意するのが望ましいです。

  • 特に薬局はシフト勤務や残業が発生しやすいため、就業規則があると労務管理がスムーズになります。

4. 時間外手当(残業代)

  • 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える場合は時間外手当(25%増)を支払う必要があります。

  • 薬局は繁忙時間が夕方や月末に集中しやすく、無自覚に残業が発生することがあるため注意が必要です。

5. タイムカードの打刻ズレの扱い

出勤前に打刻した場合(例:9時始業なのに8時50分打刻)

  • 実際の労働が9時からであれば、労働時間は9時からと扱って問題ありません。

  • 「着替えや準備のために必要な時間」を労働時間とみなすかどうかはケースバイケースですが、会社指示の場合は労働時間に含まれる可能性があります。

退勤後に打刻した場合(例:17時終業なのに17時10分打刻)

  • 実際に業務をしていれば、その分は労働時間に含める必要があります。

  • 「雑談していて押すのが遅れた」など業務外の理由であれば労働時間には含めなくても構いません。

まとめ

調剤薬局におけるパート・アルバイトの給与計算では、以下の点が特に重要です。

  • 源泉徴収は「甲欄/乙欄」をきちんと区別すること

  • 労働保険・社会保険の加入要件を満たしていないか確認すること

  • 就業規則や雇用契約で労働条件を明確にすること

  • 残業代は「実際に働いた時間」を基準に支払うこと

適正な給与計算と労務管理は、従業員の安心と薬局のコンプライアンスを守る第一歩です。

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