調剤薬局の決算賞与|経費になるための要件と注意点

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決算賞与とは?
調剤薬局を経営していると、毎年の決算で「今年は利益がしっかり出たので、スタッフに還元したい」と考える場面があると思います。
特に薬剤師や事務スタッフの頑張りは、調剤報酬や窓口対応の成果に直結するため、賞与でしっかり報いることはモチベーションアップにもつながります。
その一方で、決算賞与は「支払い方」を間違えると経費(損金)として認められず、税金の計算上は会社の負担が大きくなるリスクがあります。
つまり、正しい手続きで通知・計上・支給を行わなければならないのです。
決算賞与を経費にするための3つの要件
法人税法上、決算賞与を損金算入するためには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります(法人税法施行令第72条の3)。
1. 支給額を各人別に通知していること
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決算期末までに「誰に」「いくら」支給するのかを明確に通知する必要があります。
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「薬剤師一人あたり〇万円」といった概算では認められません。
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必ずスタッフごとに金額を決めて通知してください。
2. 通知額を損金経理していること
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決算期末に「未払賞与」として仕訳計上する必要があります。
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例:
借方 賞与 ××円
貸方 未払賞与 ××円
3. 通知から1か月以内に支払うこと
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実際の支給は、通知日から1か月以内でなければなりません。
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期末で通知し、翌月に支給するケースが一般的です。
よくある間違い
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決算後に支給額を決めて払う → 経費にならない
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役職ごとに一律金額を決めて通知 → 個人別になっていないので不可
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通知はしたが支給が遅れた → 1か月を超えると経費算入できない
調剤薬局ならではの実務ポイント
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薬剤師・事務スタッフごとに支給額を決め、期末までに通知する
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通知は書面またはメールで行い、必ず控えを残す(税務調査対策)
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店舗の業績や繁忙期の対応、薬歴入力の正確さなどを考慮した基準にすると納得感が出やすい
賞与通知書のサンプル(調剤薬局用)
決算賞与を経費に算入するためには、各スタッフに金額を通知した証拠を残すことが重要です。
以下は簡単に使えるフォーマット例です。
賞与通知書(決算賞与)
〇〇株式会社(〇〇薬局)
令和〇年〇月〇日
〇〇 様
このたび、当薬局の決算における業績に基づき、下記の通り決算賞与を支給することを通知いたします。
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支給額:〇〇円
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支給予定日:令和〇年〇月〇日
今期における業務へのご尽力に感謝申し上げます。
代表取締役 〇〇〇〇
👉 この通知書は、必ず「期末日までにスタッフへ渡す」ことがポイントです。
紙で配布する場合は受領印をもらい、メール通知の場合は送信履歴を残しておくと税務調査時に安心です。
まとめ
決算賞与を経費にするには、
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期末までに個人別に通知
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未払賞与として仕訳
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通知から1か月以内に支給
この3つが必須条件です。
調剤薬局では人件費の比率が高いため、賞与の扱い方は経営と税務の両面で重要なポイントになります。
「せっかくスタッフに還元したのに経費にならなかった」ということがないよう、要件をしっかり押さえて実務に活かしてください。