インボイス制度と調剤薬局:登録すべき?しなくてもいい?

令和5年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)。
多くの調剤薬局にとってはあまり馴染みのない制度ですが、近年はオンライン診療での自費調剤、老健施設向けの調剤、医薬品の小分け販売など、インボイス番号の有無を意識する機会が増えてきています。
「うちは登録した方がいいの?」「しなくても大丈夫?」と迷う経営者の方も多いでしょう。
ここでは、調剤薬局がインボイス制度に登録すべきかどうかを、税理士目線でわかりやすく解説します。
結論
ほとんどの調剤薬局はインボイス登録不要です。
ただし、老健施設や医療機関とのBtoB取引が多い場合や、自費診療・OTC販売が多い場合は登録を検討すべきケースがあります。
インボイス制度とは?
インボイス制度とは、インボイス登録を受けた事業者(適格請求書発行事業者)が発行する、一定の要件を満たした請求書(インボイス)をもとに、取引先が消費税の仕入税額控除を受けられる制度です。
-
インボイス番号なし → 取引先は消費税の控除ができない
-
インボイス番号あり → 登録事業者は消費税の納税義務が発生
調剤薬局の消費税の課税関係
売上内容 | 消費税区分 |
---|---|
保険調剤売上 | 非課税 |
OTC・自費・令売 | 課税 |
老健などの自費 | 課税 |
保険調剤が中心の薬局では非課税売上が大半を占め、消費税の納税はほぼありません。
このため、インボイス登録によるメリットは限定的です。
登録しなくても困らないケース
-
売上の9割以上が保険調剤
-
医薬品仕入がほとんどで、課税売上に対応しない仕入が多い
-
BtoC(一般顧客向け)の販売が中心で、取引先からのインボイス要求がない
登録した方がいいケース
-
OTC・雑貨販売など課税売上が一定額以上ある
-
老健施設・医療機関向けに保険外の調剤や物品販売を行っている
-
取引先からインボイス番号を求められている
登録しない場合のデメリット
-
法人取引先から取引見直しを求められる可能性
-
契約更新時に不利になるケースがある
-
将来課税売上が増加した際に改めて登録が必要になる
登録タイミング
登録申請から承認までは約2か月かかります。
今後の事業計画や取引先の意向を踏まえ、「必要かも」と思ったら早めに準備しましょう。
※開業時を除き、遡っての取得は不可。
まとめ
調剤薬局は非課税売上が中心ですが、OTC販売や外部とのBtoB取引が多い場合は登録が必要になることもあります。
迷った場合は、顧問税理士に現状を整理してもらい、最適な判断をしましょう。