調剤薬局と労災保険 ― パートや家族従業員にも必要?

調剤薬局を経営していると、パート薬剤師や事務スタッフ、さらにはご家族にお手伝いをお願いするケースも少なくありません。
そんなときに必ず出てくる疑問が、「労災保険って必要なの?」というものです。
薬局は医療系なので安全そうに見えますが、実は労災リスクはゼロではありません。本記事では、薬局経営者が押さえておくべき労災保険の基本を整理していきます。
薬局にも労災保険は必要なのか?
労災保険(労働者災害補償保険)は、すべての事業に原則強制適用されます。これは業種を問いません。もちろん調剤薬局も対象です。
労災保険料は全額事業主負担であり、従業員から天引きする必要はありません。薬局を開業したら、従業員を雇った段階で労災保険への加入手続きが必須となります。
パート薬剤師・事務スタッフの場合
勤務形態にかかわらず、労働者として雇用している以上は労災保険の対象です。
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週1回の勤務でも対象
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パート・アルバイト・短時間勤務も対象
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給与が少額でも関係なし
実際に薬局で起こり得る労災例としては、
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フロアでの転倒
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重たい医薬品の搬入時の腰痛
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薬品による皮膚炎やアレルギー反応
などがあります。
「うちの薬局は安全だから大丈夫」と思っていても、思わぬ事故はつきものです。
家族従業員は対象になるのか?
ここでよく問題になるのが「家族従業員」です。
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同居の親族(配偶者・子どもなど)は、形式上「労働者」と認められにくいケースがあります。
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ただし、明確に給与を支給しており、使用従属関係(勤務時間や職務内容の指揮命令)がある場合には「労働者」として労災対象になる可能性があります。
一方で、対象外となる場合でも安心はできません。その場合は、「特別加入制度」を利用してカバーする方法があります。
調剤薬局経営者自身はどうなる?
事業主自身は、原則として労災保険の対象外です。
しかし、調剤薬局の経営者であっても、配送や現場での作業に関与するケースでは事故リスクがゼロではありません。
この場合は、中小事業主等特別加入制度を利用することで、経営者自身も労災保険に加入することが可能です。
まとめ ― 薬局経営者が押さえるべきポイント
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薬局で従業員(パート含む)を雇うなら、労災保険加入は必須。
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家族従業員はケースバイケース。給与や勤務実態を整えていれば対象となる可能性あり。
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経営者自身は原則対象外だが、特別加入制度を使えばカバーできる。
薬局経営において労災保険は軽視されがちですが、いざというときの備えとして非常に重要です。万一の事故で従業員を守り、経営者自身を守るためにも、労災保険をきちんと理解しておきましょう。