調剤薬局で社用車は購入できる?経費にできる?

調剤薬局でも、在宅医療+在宅調剤、薬剤師が訪問しての調剤も増えてきましたし、配達・銀行や役所への移動・施設や老健などで車が必要になる場面は少なくありません。
では「社用車の購入や使用コストは、どこまで経費にできるのか」。結論はシンプルで、業務のために使っているかどうかが起点です。
目次 ▲
結論:業務使用が前提。私用が混ざるなら合理的に按分
結論からお話ししますと、「業務使用なら経費にできる」ということになります。
例えば・・
処方薬の配達、近隣病院・施設との連携、銀行・役所・取引先訪問、採用面接や研修での移動など。
私用が混ざる場合は按分
それでは家族送迎・買い物など私用が含まれるとダメなのかというと、その分は除外(または給与課税の対象になり得ます)する必要があります。
按分は「事業用走行距離 ÷ 総走行距離」など合理的基準で行い、運行記録(日報・走行距離・行先)を残すことが必要です。
役員・院長の個人的利用は“経済的利益(給与)”課税のリスク
役員車として私用が多いと、費用の一部または全部が役員給与とみなされ追加課税となる可能性があります。運行実態・社内規程での用途限定・鍵管理などの体制整備が重要です。
経費として計上できる費用の範囲
業務利用分に限って、次の費用は損金(経費)にできます。
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ガソリン・充電代、オイル・消耗品
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自動車保険料
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自動車税・重量税
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駐車場代(月極・コインP)
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車検・点検整備・修理費
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高速料金・有料道路
按分が必要なときは、運行記録やレシートのメモで業務関連性を紐付けましょう。
購入費の処理:減価償却の基本と“中古・少額”の特例
新車の耐用年数(普通乗用車)
普通車は法定耐用年数は6年となりますので6年で経費にします。
軽自動車は法定耐用年ス4年です。
具体的には取得価額を耐用年数に応じて減価償却で費用化します。
中古車の耐用年数(簡便計算)
中古車の場合は私用できる期間が新車より短いため簡便法という方法で耐用年数を見積ります。
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全部経過(耐用年数6年又は4年を過ぎた中古車)
法定耐用年数 × 20%(ただし2年未満は2年) -
一部経過:〔法定耐用年数 − 経過年数〕 + 〔経過年数 × 20%〕(端数切捨て)
普通車なら、概ね2〜4年程度になることが多いです。
シンプルいうといわゆる「4年落ち」なら2年です。
2年で計算すると償却方法によっては1年で全額経費になることもあります。
30万円未満なら「少額減価償却資産の特例」
中小企業等・青色で、取得価額30万円未満の資産は即時費用化が可能(年合計300万円まで)です。
上記により(中古車でも今は高いですが)、購入額30万円未満であれば一括で経費にできます。
名義と処理の考え方
法人(薬局)名義の車
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原則、業務使用分は全額経費(私用分は除外/給与課税リスク)。
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社内規程で用途・保管・鍵管理・運転者・休日利用の可否を明確化し、運行記録で実態を担保します。
個人(オーナー)名義の車を業務使用
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実費精算(ガソリン、高速、駐車場など)
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名義が個人のまま車両本体(資産)を法人に計上するのは原則困難です。
- 個人から法人が車をリースしているという方法により使用したものについて経費計上は可能です。(ただし、個人での所得税申告が必要です)
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役員の私用が混ざる場合は給与課税の論点に注意しましょう。
よくあるNG/調査で揉めるポイント
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運行記録が無い/雑(按分根拠が示せず否認されやすい)
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役員家族の送迎・買い物を常態化(経済的利益→給与課税のリスク)
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個人名義の車の本体を法人資産に計上(名義不一致)
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30万円未満特例の要件・上限超過や別表の失念(申告是正の対象)
迷ったら:購入とリースのざっくり比較(実務目線)
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購入:資産計上→減価償却。将来の売却・下取も視野。
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(一般的な)オペレーティングリース:毎月のリース料を期間費用(契約と実態の確認必須)。
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保険・税金・車検の負担形態が契約で異なるため、総コストと按分のやりやすさで比較します。
まとめ(他の調剤薬局はどうしてる?)
門前薬局などで車を利用するようなことがない場合は経費計上は非常に慎重に行う必要があります。
訪問調剤、薬剤師による在宅訪問などで車を利用する場合は社用車として計上が可能な範囲は広がります。
その他、駅から遠い場合や地方の場合は車が必須だったりもしますから、その場合は社用車として認められる範囲も広くなります。
一番いいのは「〇〇調剤薬局」と車にプリントしてあると分かりやすいです。
いずれもケースバイケースということになりますので、税理士と相談して社用車の計上を行いましょう。