調剤薬局は法人でスタートしよう

その際、最初から「法人」でスタートすべきか、それともまずは「個人事業主」として始めるべきか——。
開業前の相談で、よくいただくご質問のひとつです。
たしかに、一般的な事業であれば「まずは個人事業でスタートして、軌道に乗ったら法人化する」という流れが王道と言えるでしょう。
ただし調剤薬局に関しては少し事情が違います。
実は“最初から法人で始めるケースが圧倒的に多いのです。
目次 ▲
なぜ調剤薬局は「法人スタート」が多いのか?
理由はいくつかありますが、代表的なものをご紹介します。
開業前からある程度の売上見込みが立つ
調剤薬局は、処方箋の応需をベースとしたビジネスモデルのため、開業時点で近隣クリニックの状況などからある程度の処方箋枚数=売上見込みが立てやすい業種です。
このため、売上ゼロからスタートするような不確実な事業よりも、法人を設立するハードルが心理的にも低くなります。
保健所の許可や手続きの関係
調剤薬局は開設時に保健所からの許可が必要です。法人か個人かによって手続きの違いはありますが、法人のほうが手続きが整然としており、将来的な事業展開にも対応しやすいという利点があります。
消費税の節税メリットが小さい
通常、個人事業でスタートすると、2年間は売上1,000万円以下であれば消費税が免税されるという「2年間消費税免税ルール」が活用できます。
(現在はインボイス制度もあるのでそれも薄れましたが)
ただし、調剤薬局は保険調剤が売上の大部分を占めており、そもそも消費税のかからない「非課税売上」がメインです。
そのため、法人化による消費税デメリットをあまり気にしなくてよいという事情があります。
人材確保の観点からも法人が有利
薬剤師や事務スタッフを雇う場合、「法人であること」は求人の信頼性や安定性に直結します。給与体系、福利厚生、労務管理などの面でも法人の方が整っており、人材確保の面でも有利に働くことが多いです。
個人で始めるのはダメ?
決してそんなことはありません。ただ、下記のようなケースであれば個人事業でスタートする選択肢も現実的です。
- まずは低コストで始めたい
- 自分一人での運営を想定している(スタッフを雇わない)
- 売上がごく少ない(無床診療所併設などの限定的ケース)
- いったん自分の名義で許可を取りたい事情がある
ただし、その後すぐに法人化を検討する可能性があるなら、最初から法人でスタートしておいた方が手間やコストの面でもスムーズです。
まとめ:調剤薬局は最初から法人スタートが基本
調剤薬局の開業においては、「法人で始める」ことがいまやほぼ標準になっています。税金や手続きの面だけでなく、人材確保や将来の店舗展開などを考慮しても、法人スタートは中長期的にメリットが大きいからです。
どちらが適しているかは、薬局の規模や今後のビジョンによっても変わります。迷ったら、開業前に一度、税理士などの専門家に相談してみると安心です。