調剤薬局の法人化はいつがベスト?個人開業と法人の税金比較

この記事では、薬局の法人化のタイミングと、個人事業との税金面での違いを中心に解説します。
調剤薬局は法人でスタートすべき?
法人化の話をする前に調剤薬局はそもそも法人でスタートすべきでしょうか?
それとも個人事業からスタートして法人化すべきでしょうか?
実際、通常の事業においては個人事業→法人化ということが圧倒的に多いですが調剤薬局においては法人からスタートすることが圧倒的に多いです。
というのもある程度の売上見込みが付くということと、保健所の許可が必要であること、法人化に伴う消費税のメリットも調剤薬局においてはないこと、人材確保のためには法人にしておく方が良いことなどがあります。
ですので、どちらが良いかではなく、どちらが多いかで言うと法人からスタートすることが多いです。
法人化とは?薬局経営における意味
「法人化」とは、個人ではなく株式会社や合同会社などの法人として薬局を運営することを指します。
調剤薬局の場合は、初めから法人でスタートすることも多いですが、個人事業でスタートして、一定の売上や従業員規模になったタイミングで法人化を検討することも可能です。
個人事業主と法人の主な税金の違い
項目 | 個人事業主 | 法人 |
所得課税 | 所得税(累進課税 最大55%) | 法人税(中小企業なら実効税率約23%) |
住民税・事業税 | 所得に応じて発生 | 法人住民税・法人事業税が発生 |
消費税 | 基準期間売上1,000万円超で課税 | 同様(ただし資本金1,000万円以上で即課税) |
社会保険 | 従業員のみが加入 | 役員も健康保険・厚生年金に加入 |
赤字の繰越 | 3年 | 最大10年(青色申告の場合) |
法人化のメリット
① 税率の低減
個人事業主の所得税は累進課税で、所得が高くなるほど税率が重くなります。年収が800~900万円を超えるあたりから、法人化した方が節税効果が見込まれることが多くなります。
② 経費計上の自由度
法人では、役員報酬、退職金、法人名義の車両や保険料などを経費化でき、節税の選択肢が広がります。
③ 社会的信用力の向上
金融機関からの融資や取引先との関係において、法人の方が信用を得やすい傾向があります。
④ 節税スキームの活用
所得分散(例:配偶者への役員報酬)、役員退職金、社宅制度など、法人ならではの税務戦略が使えます。
法人化のデメリット・注意点
- 法人設立費用(合同会社:約10万円、株式会社:約20万円)
- 会計処理・税務申告が複雑になる(税理士報酬も必要)
- 社会保険料の負担が大きくなる(役員自身も加入義務)
法人化のベストなタイミングは?
【一つの目安:年間利益が500万円を超えたら】
所得税と法人税の税率差が効いてくるのがこのあたりです。個人事業主としての利益(売上-経費)が500万円を超え始めたら、法人化を具体的に検討する価値があります。
【その他の判断材料】
- 従業員を3名以上雇う予定がある
- 家族に給与を支払いたい
- 事業拡大や新規出店を考えている
- 融資を受ける予定がある
薬局法人化の具体的な流れ
- 法人設立の相談(税理士・司法書士)
- 定款作成と登記申請
- 開業届・保健所の許可や各種保険・税務手続き
- 会計体制の整備(クラウド会計の導入など)
まとめ
調剤薬局の法人化は、節税だけでなく、事業の安定性や発展性にも大きく関わる選択です。個人開業のままでも良いケースもありますが、利益が増えてきた段階で法人化を検討するのが賢明です。
具体的な判断は、税理士に相談してシミュレーションを行うことをおすすめします。