調剤薬局が知っておきたい「賃上げ税制」

~2024年度診療報酬改定と合わせた節税対策~
賃上げ税制とは?
「賃上げ税制(正式名称:賃上げ促進税制)」は、従業員への給与支給額を前年より一定割合以上引き上げた企業に対して、法人税または所得税の一部を税額控除できる制度です。
中小企業に該当する調剤薬局も対象で、制度を活用すれば、賃上げによる人材定着と税負担軽減の両立が可能です。
調剤薬局における活用の背景
2024年度の診療報酬改定では、多くの調剤薬局で適用される「調剤基本料」が一律3点引き上げられました
この点数増は、実質的に薬局の増収となるため、その一部を従業員の給与に還元することで、賃上げ税制の対象となることが期待されます。
賃上げ税制の具体的要件(中小企業向け)
以下は、令和6年度の制度に基づく主な要件です。
区分 | 要件 | 税額控除率 |
基本要件 | 前年比で給与等支給額を1.5%以上引き上げ | 15% |
上乗せ① | 教育訓練費が前年の1.2倍以上 | +10% |
上乗せ② | 給与増加率が2.5%以上 | +15% |
最大控除率 | 要件すべて満たす場合 | 最大45% |
※税額控除額は、法人税額の20%が上限。ただし、翌年度への繰越が可能です。
賃上げに使える財源は?
調剤基本料の点数アップにより、処方箋1,000枚の薬局では以下の増収が見込まれます。
- 3点 × 10円 × 1,000枚 = 月3万円
- 年間で36万円の増収
この増収分を従業員給与に充てれば、無理のない範囲で賃上げが可能になります。
40歳未満薬剤師への賃上げ要件も考慮
2024年度の改定では、40歳未満の薬剤師・事務職員を対象にした賃上げ要件も別途設定されており、こちらは処遇改善加算の対象となることがあります。
賃上げ税制とは直接の関係はありませんが、国としても「若年層への給与引き上げ」を支援している点は共通しています。
注意点
- パート・アルバイト含むすべての従業員が対象
- 給与「総額」での判定(基本給・賞与・手当を含む)
- 教育訓練費や女性活躍支援などの要件も書類で証明が必要
- 控除を受けるためには、決算時の法人税申告書に明細書の添付が必要
まとめ
調剤薬局にとって、賃上げ税制は単なる「人件費の増加」ではなく、計画的に活用すれば税額控除という形で還元される有効な施策です。
診療報酬改定で得られる増収分を活用し、若年層の薬剤師確保・定着とともに、法人税の軽減にもつなげましょう。
※賃上げ税制は法人ではなく個人事業の場合の所得税でも適用可能です。