給与と賞与で何が違う?調剤薬局で知っておくべき源泉・社会保険

とくに「賞与って、給与より税率が高い気がする」といった声はよく聞きます。
今回は、調剤薬局の薬剤師先生が知っておきたい「給与と賞与にかかる源泉徴収・社会保険の違い」について解説します。
給与と賞与、それぞれの扱いは異なる
給与とは、毎月決まって支払う基本給や各種手当のことを指します。
一方、賞与は年に1回または2回など、特定の時期にだけ支払うボーナスのようなものです。
この違いから、税金や社会保険の計算方法もそれぞれ異なるルールが設けられています。
所得税(源泉徴収)の違い
給与にかかる所得税は、国税庁が公表している「源泉徴収税額表」に基づいて、扶養の有無や社会保険料の額を考慮して計算されます。比較的細かく、個人ごとの状況に応じて税額が決まります。
一方、賞与にかかる所得税は、基本的に「前月の給与額に基づいて決まった税率」をそのまま使って一律で計算します。つまり、同じ金額を支給しても、給与と賞与では計算方法が異なるため、実際の源泉税額にも差が出るのです。
このため、「賞与の方が税率が高い」と感じる方もいますが、実際には計算方法の違いによるものです。最終的には年末調整で精算されるため、年間トータルでは整合が取れるようになっています。
社会保険の違い
社会保険についても、給与と賞与では計算の仕方が異なります。
給与にかかる社会保険料は、あらかじめ決められた「標準報酬月額」に基づいて毎月計算されます。給与が一定なら毎月同じ保険料が控除される仕組みです。
一方、賞与にかかる保険料は、実際の支給額にそのまま保険料率を掛けて計算されます。つまり、支給額が大きければそのぶん保険料も高くなるというシンプルな構造です。
また、年に4回を超えて賞与を支給する場合、通常の「賞与」として扱われず、給与として取り扱われることもあるため、支給回数にも注意が必要です。
実務上の注意点
賞与を支給する際は、前月に給与がなかったスタッフの場合、特例的な税率で源泉税を計算する必要があるため、給与計算ソフトの設定を正しく行うことが重要です。
また、手取り額に対する期待と現実に差が生じやすいのも賞与の特徴です。賞与は社会保険や所得税、雇用保険の負担もあるため、思ったよりも手取りが少ないと感じるスタッフもいます。
事前におおよその「手取り額」を伝えておくことは、従業員満足度を保つためにも大切です。
結論
基本的な考え方として覚えておきたいのは、社会保険も税金もどちらでも個人の負担や会社の負担もどちらもそれほど変わらないということです。
とはいえ、賞与の支給はスタッフのモチベーション向上に有効ですので、経営側としては会社のコスト(社会保険料の会社負担も含めた支出)を把握しておく必要があります。
また、賞与の支給によって年間の所得が増えれば、配偶者控除や扶養控除の適用に影響が出ることもあります。
年末調整や確定申告に向けたフォロー体制も大切ですね。