棚卸(医薬品の在庫)の計算で注意することは?

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決算時には棚卸在庫の計算が必要
調剤薬局では、決算のタイミングで棚卸在庫の金額を算出する必要があります。棚卸在庫とは、購入した医薬品のうち、決算日時点でまだ使用していない、つまり在庫として残っている薬品を指します。
この棚卸の計上は、単なる在庫確認ではなく、費用計上や税務処理に直結する重要な業務です。
薬品の費用計上は「使用時」が原則
薬品は購入した時点では費用にはなりません。まずは棚卸資産として計上され、実際に使用された時点で売上原価として費用に落とし込まれます。したがって、決算時点で使用されていない薬品については、たとえ使用期限が迫っていても費用にはならず、資産として計上することになります。
この考え方を誤ると、費用が過大に計上されてしまい、結果として利益の操作とみなされる可能性があります。
在庫の計算方法とは?
棚卸在庫の金額は、次のように計算します。
期首在庫+当期仕入-期末在庫=薬品の使用分(費用化される分)
この「期末在庫」は、薬品ごとに在庫数量を数え、単価を掛けて算出します。使用している単価は「移動平均法」や「最終仕入原価法」など、継続的に採用している方法に基づく必要があります。
例えば、100錠仕入れて60錠使った場合、残っている40錠に対応する仕入単価を掛け合わせて金額を出します。過去の仕入単価がバラバラの場合には、在庫評価方法を事前に統一しておくことが重要です。
また、保険薬局の場合は販売価格ではなく、仕入価格ベースで評価することが原則です。
廃棄すれば経費にできる?その前に確認すべきこと
使用期限が切れた薬品や変質してしまった薬品は、廃棄すれば経費にすることができます。ただし、実際に廃棄した事実や、その薬品が使えない状態であることを客観的に証明できなければ、税務上でその処理が否認されるおそれがあります。
廃棄の証拠を残すことが大前提
廃棄した薬品については、薬品名・数量・廃棄日などを記載したリストや、廃棄前後の写真、管理薬剤師の確認記録などを残しておくことが重要です。こうした証拠がないと、税務署から「本当に廃棄したのか」と疑われることがあります。
不適切な仕入れは損金にならないことも
計画性のない過剰仕入れにより薬品が期限切れになった場合、その廃棄は経営判断ミスとして扱われ、損金(経費)として認められないことがあります。日頃から仕入と消化量のバランスを見直すことが求められます。
古い在庫の廃棄にも注意
数年前に仕入れて棚に眠っていた薬品を、今年になって廃棄した場合でも、費用として計上できるのは廃棄を実施した今年度のみです。過年度にはさかのぼれないため、毎年の棚卸で在庫を適切に管理し、早期に処分する判断が必要です。
棚卸は税務リスク管理の一環
薬品の棚卸は、正確な会計処理と税務対策の出発点です。在庫と帳簿の整合性を取り、期限切れや不要な在庫が放置されていないかを確認することで、税務調査でのリスクも抑えられます。
まとめ
調剤薬局の経営において、棚卸在庫の適切な計算と処理は非常に重要です。在庫が正しく計上されていないと、利益や税額に大きな影響が出てしまいます。特に、廃棄処理には慎重な対応と証拠の保全が欠かせません。
棚卸や廃棄処理に不安がある方は、調剤薬局に詳しい税理士に早めに相談し、トラブルのない決算を迎えましょう。