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調剤薬局に役員賞与(事前確定届出給与)は出した方が良い?

役員については賞与が支給できないという話は聞いたことがあると思います。
実査、役員については労働契約ではなく委任契約であることから賞与というものが前提とされず、法人税法においても賞与は経費と出来ないこととなっています。

ですが例外として事前に税務署に届け出ることによって支給することもできます。
それを事前確定届出給与と言います。

事前確定届出給与(役員賞与)とは?

通常、役員賞与は税務上の経費にできません。ただし「事前確定届出給与」として、支給日と金額をあらかじめ税務署に届け出て、その通りに支給すれば損金算入が認められます。要件は次の3つです。

  1. 支給日と金額を事前に届出すること

  2. 届出どおり必ず支給すること

  3. 期首から4か月以内、または株主総会決議から1か月以内に提出すること

調剤薬局におけるメリット

調剤薬局で事前確定届出給与を使うメリットには、法人税の節税効果があります。特に黒字が大きく出る年には、役員賞与を出すことで利益を圧縮できます。また、給与と賞与を分けることで報酬体系に変化をつけやすく、役員のモチベーション向上につながるケースもあります。さらに税務署に届出をしているため、透明性が高い点もメリットといえるでしょう。

デメリットと注意点

一方で注意すべき点も多くあります。まず、柔軟性がないことです。一度届出をしたら、その日付と金額どおりに必ず支給しなければなりません。資金繰りに余裕がない場合でも止めることはできず、調剤報酬の入金タイムラグを考えると現金が不足する可能性があります。また、届出の手間もあり、提出忘れや記載誤りは即「損金不算入」になってしまいます。

不支給とした場合のリスク

届出をしておきながら役員賞与を支給しなかった場合、大きなリスクが生じます。

  • 損金算入が全額否認される
    支給しなかった場合は、届出した金額全体が損金不算入になります。一部だけ出した場合も全額否認となります。

  • 債務免除益として課税される可能性
    実務上は一旦役員報酬として計上し、その後未払金を免除する仕訳を行う必要があります。その結果、支払わなかった金額が「債務免除益」として益金に計上され、かえって税負担が増えることになります。

  • 税務調査でのリスク
    届出をしたのに支給しなかったとなると、形式的な届出と見なされ、信頼性を損ねる恐れがあります。

  • 事前の受領辞退が必要
    やむを得ず支給を取りやめる場合には、支給時期の前に株主総会で「受領辞退」の決議を行っておく必要があります。これにより課税関係の一部が回避されるケースもあります。

結論:調剤薬局は毎月の役員報酬で十分

調剤薬局は比較的安定した収益が見込めるため、原則としては毎月の役員報酬(定期同額給与)で十分です。毎月の給与であれば資金繰りの予測がしやすく、届出や支給日の縛りもなくシンプルに管理できます。
事前確定届出給与は、必ず支給できる確信がある場合や特別な理由がある場合のみ検討するべき制度です。

結論としては、調剤薬局においては「毎月の役員報酬で対応するのが無難であり、役員賞与は原則不要」といえます。

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