調剤薬局経営者必読!消費税が課税されるケースと申告時の注意点

この「保険外の販売」は、消費税の取り扱いで注意すべき点がいくつもあります。見落とすと税務上の損や余計な事務負担が発生する可能性があるため、ポイントを整理しておきましょう。
目次 ▲
保険調剤による売上は消費税非課税
処方箋に基づく保険調剤の売上は「消費税非課税」です。原則として調剤報酬には消費税がかかりません。
課税対象となる販売例
- 市販薬(OTC医薬品)、サプリメント、日用品、化粧品、飲料
軽減税率8%(食料品)/標準税率10%(それ以外) - オンライン診療や自由診療に伴う自費調剤
美容・AGA・ED治療薬など保険適用外の処方薬販売は課税 - 自由診療型薬局(零売薬局)での販売
保険請求を行わない処方薬や輸入医薬品の販売は課税 - 老健・介護施設向けの医薬品・OTC販売
施設へまとめて納品する保険外の販売は課税 - 他薬局・施設への小分け販売(分譲・卸売り)
他事業者への分譲は原則10%課税(食品扱いは8%)
これらはすべて課税売上に含まれ、年間課税売上の判定に合算されます。販売価格は税込で設定し、状況により消費税申告の対象となります。
調剤と課税売上が混在する場合の注意点
1. 納税義務の発生
年間の課税売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が発生します。
(正確には課税売上が1,000万円を超えた2年後の年に消費税の納税義務が発生します)
また課税売上が1,000万円以下でも、インボイス登録など一定条件下では納税義務が生じる場合があります。
2. 消費税計算方式の選択
消費税の納税が発生すると消費税の申告書と納税が必要となります。
その際に事前に届出を出すことによって本則課税に代えて簡易課税制度という計算方法によって消費税の計算を行うことができます。
簡易課税を選ばない場合は本則課税となるのですが、このふたつはどちらを選ぶかによって同じ業績でも消費税の納税額に差が出ます。
基本的には課税売上が少ない調剤薬局では簡易課税を選ぶことが多いですが、非課税売上(保険調剤)と自費調剤の割合によっては簡易課税が不利になるケースもあります。
本則課税と比較し、課税割合や売上構成を踏まえて選択する必要があります。
また簡易課税制度は事前の届出が必要ですので早めの確認が必須です。
3. 仕入税額控除の按分
本則課税の場合、課税売上に対応する仕入・経費のみ仕入税額控除の対象となり調剤業務(非課税売上)に係る支出は控除不可ですが、保険調剤とOTCや自費調剤に両方に係る仕入・販促費は按分計算が必要になることがあります。
少し簡便に言うと、消費税の計算において本則課税の場合は自費売上から自費に対する仕入や経費を引いて計算するという方法です。
対して、簡易課税はそういった計算を要さず売上に対して〇%という計算を行います。
これらの違いにより納税額に差異がでます。
4. インボイス制度への対応
課税売上がある薬局は、取引先対応のためインボイス登録が必要となる場合があります。
ただし、登録すると消費税申告義務が生じるため、キャッシュフローや事務負担も含めて慎重に判断しましょう。
なお、消費税の納税が発生しているケースにおいてはインボイス登録はした方が良いです。
インボイス登録を行うと消費税の納税義務が発生しますが、そもそも消費税の納税義務があるならばインボイス登録をしないという理由がないからです。
まとめ
消費税の課税対象は、市販薬や雑貨だけでなく、オンライン診療の自費調剤、自由診療薬局での販売、老健施設向け販売、小分け販売なども含まれます。毎期の決算時に以下を必ず確認しましょう。
- 年間課税売上が1,000万円を超えていないか
- 課税方式(簡易課税 or 本則課税)の選択は妥当か
- 経費の按分や仕入税額控除の処理は適切か
- インボイス登録の要否と運用体制は整っているか
保険外売上の範囲を正しく把握し、適切な消費税処理を徹底することが、税務トラブルを避ける第一歩です。
税理士と顧問契約していない調剤薬局さまは消費税について処理を間違っていることが多くあります。1年に1度程度は税理士に相談しておくと調剤薬局における消費税の格段に減りますので税理士への相談を検討しましょう。