ファーマシー税理士事務所

調剤薬局設立時の手続き|税務上の注意点とは?

調剤薬局を新たに開業する際には、薬事法や保健所への手続きのほかにも、税務上の届出や社会保険の手続き、経理体制の整備が重要です。

今回は、調剤薬局の設立時に必要となる税務手続きを中心に、開業時の流れを整理してご紹介します。

 

まずは法人?個人?調剤薬局の開業形態を決める

調剤薬局を始める場合、多くのケースでは法人設立を選択します。その理由は以下の通りです。

  • 保険薬局の指定申請が法人の方がスムーズ
  • 人材採用(薬剤師確保)において法人格の信頼性がある
  • 所得が一定以上見込まれる場合、法人の方が節税面で有利

開業前に、個人事業主として始めるか法人設立するかは慎重に判断しましょう。

 

調剤薬局開業時の税務関係の届出一覧(法人編)

法人で薬局を設立した場合、税務署・都道府県税事務所・市区町村に対して、次のような届出が必要になります。

届出書名 提出先 提出期限 補足
法人設立届出書 税務署 設立日から2か月以内 定款・登記簿謄本など添付
青色申告の承認申請書 税務署 設立日から3か月以内 or 第1期確定申告期日まで 青色申告の特典(欠損金繰越など)を活用するために必要
給与支払事務所等の開設届出書 税務署 開設から1か月以内 給与の支払いがある場合
源泉所得税の納期の特例の承認申請書 税務署 特例希望時 給与が常時10人未満の場合、年2回納付にできる
法人設立・設置届出書 都道府県税事務所・市区町村 各自治体による 地方法人税や住民税のため

 

インボイス制度の登録は必要?

調剤薬局が扱う「保険調剤」は非課税売上ですが、OTC医薬品や雑貨等の販売がある場合は課税売上となります。

課税売上があるからといってインボイス番号を取得する必要はありません。

インボイス番号を取得すると消費税の申告が必要となりますので、保険調剤の多い門前薬局の場合だと通常はインボイス番号を取得しないことが多いです。

ただし、老健施設や医療機関との取引がある場合にインボイス番号が必要であれば取得する必要があります。

 

社会保険(労災保険)の加入手続き

法人を設立して従業員(薬剤師・事務員など)を雇う場合は、社会保険(健康保険・厚生年金)と労働保険(雇用保険・労災保険)の加入が義務となります。

加入手続きの概要

保険の種類 手続き先 提出期限 備考
健康保険・厚生年金 日本年金機構(年金事務所) 5日以内(開設日から) 被保険者資格取得届などを提出
労災保険・雇用保険 労働基準監督署(労災)
ハローワーク(雇用)
雇用開始後速やかに 労働保険関係成立届、概算保険料申告書など

労災保険は1人でも雇えば必要

たとえパートやアルバイト1人でも雇用していれば、労災保険の加入は必須です。薬剤師や事務スタッフの通勤中や業務中の事故に備えて、必ず加入しておきましょう。

雇用保険の加入要件

  • 週20時間以上勤務
  • 31日以上の雇用見込みがある場合

この条件に該当するスタッフには雇用保険の適用が必要です。

社会保険未加入のリスク

  • 遡っての保険料徴収(最大2年分)
  • 税務調査や労基署の調査で是正指導
  • 採用時の信頼性低下

薬局は専門人材の確保が鍵です。スタッフに安心して働いてもらうためにも、設立直後の社会保険手続きは最優先事項といえます。

 

経理・会計体制は開業前に整える

調剤薬局の経理には以下の特徴があります:

  • 保険請求は入金サイクルが特殊(支払基金・国保連)
  • OTCと調剤の消費税区分が異なる
  • 在庫管理(薬品)も税務上重要

したがって、開業と同時に以下を整えるのがベストです。

  • クラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)の導入
  • 銀行口座やクレジットカードの分離(法人専用口座の開設)
  • 記帳代行を税理士に依頼するのもおすすめ

 

弊社では調剤薬局の経営に専念してもらうためにも記帳代行を税理士に丸投げすることをお勧めしています。

 

まとめ|税務手続きは早めに専門家へ相談を

調剤薬局の開業は医療機関への届出に意識が向きがちですが、税務面の準備も同時に進めなければなりません。設立直後の対応が、その後の税務リスクや節税効果を大きく左右します。

開業前から税理士と連携し、適切な届出と会計体制を整えることをおすすめします。

関連記事

調剤薬局の法人化はいつがベスト...

初めてのご相談をご検討中の方へ

インボイス制度と調剤薬局:登録...

OTC医薬品や雑貨の消費税に注...

調剤薬局で社用車は購入できる?

上部へスクロール