調剤薬局専門の税理士ファーマシー会計事務所

調剤薬局の法人税申告書を自分で作成するのはアリ?薬局専門税理士が正直にお伝えします

「開局したばかりでコストを抑えたいので、法人税の申告は自分でやろうと思うんですが、できますか?」

調剤薬局の先生からたまにこうした質問を受けます。最近では「AIに聞きながらやれば何とかなりそう」という声も増えてきました。

結論からいうと、できないことはありません。しかしおすすめしません。
特に調剤薬局は、一般の会社よりも申告の難易度が高い業種です。

ポジショントークに聞こえるかもしれませんが、その理由を正直にお伝えします。

法人税申告書は所得税確定申告の延長ではない

個人の確定申告をやったことがある先生は、「法人も同じようにできるだろう」と考えがちです。

しかし法人税申告書はまったくの別物です。

法人税の申告には、決算書のほかに「別表」と呼ばれる書類を作成する必要があります。別表一(税額計算)、別表四(所得金額の計算)、別表五(一)(利益積立金の計算)など、相互に数字が連動する複数の書類を整合させながら作り上げていきます。さらに法人事業税・法人住民税、消費税の申告書も別途必要です。

レセコンや会計ソフトが自動で作ってくれる帳簿とは違い、別表は税務の知識がないと正しく作成できません。

調剤薬局は一般の会社より申告が難しい

さらに調剤薬局には、業種特有の難しい論点があります。

①消費税の計算が特殊

調剤薬局の売上は、保険調剤(非課税売上)とOTC・物販(課税売上)が混在しています。仕入税額控除の計算には「課税売上割合」を使った複雑な計算が必要で、一般の会社の消費税申告よりも格段に難易度が高くなります。個別対応方式と一括比例配分方式の有利判定など、選択を誤ると納税額が大きく変わる論点もあります。

②医薬品の棚卸資産

調剤薬局は医薬品の在庫金額が大きく、期末棚卸の計上を誤ると所得金額が大きくズレます。
デッドストックの評価や使用期限切れ医薬品の処理など、判断が必要な場面も多くあります。

③調剤報酬の未収計上

調剤報酬はレセプト請求から入金まで約2ヶ月のズレがあります。
期末時点でまだ入金されていない2ヶ月分の調剤報酬は「未収入金」として売上計上が必要ですが、入金ベースで売上を計上してしまい、この2ヶ月分が漏れているケースが非常に多いです。
税務調査で真っ先に確認されるポイントでもあります。

AIに聞けばできる?AIでも知識がないと正しい答えは返ってこない

「ChatGPTに聞きながら作れば大丈夫では?」という先生も増えています。
たしかにAIは税務の質問に答えてくれます。しかしここに落とし穴があります。

AIは質問されたことには答えますが、質問されていないことは教えてくれません。

「この経費は損金になりますか?」と聞けば答えは返ってきます。しかし、課税売上割合の計算方法に誤りがあること、未収の調剤報酬が漏れていること、使えるはずの優遇税制があることは、こちらから聞かない限りAIは指摘してくれません。

「何を質問すべきかがわかる知識」がない状態でAIを使っても、自分の知らない論点はずっと抜けたままです。知識がない人がAIを使うと「間違いに気づかないまま自信だけ持ってしまう」という最も危険な状態になります。

「提出できて何も言われなかった」は「正しかった」ではない

法人税申告書は多少間違っていても提出自体はできてしまいます。税務署は提出時に内容をチェックしてくれるわけではないからです。

ここで多くの方が誤解するのが、「提出して何も言われなかったからOKだった」という考え方です。

税務署が申告内容を本格的に確認するのは、提出時ではなく後日の税務調査です。調査は数年分をまとめて調べるため、間違いが発覚するのは申告から2〜3年後ということも珍しくありません。

そしてその時点で間違いが見つかると、本来の税額に加えて過少申告加算税・延滞税がペナルティとして課されます。

未収調剤報酬の計上漏れが3年分まとめて指摘されれば、追徴額は相当な金額になります。その時点ではもう取り返しがつきません。

作成には膨大な時間がかかる

税務知識がない方が法人税申告書を作成しようとすると、調べながらの作業になるため数日から1週間以上かかることも珍しくありません。しかもそれだけかけても、正しくできている保証はありません。

薬局の経営者である先生の時間は、服薬指導・在宅対応・スタッフマネジメント・処方元との関係構築など、薬局の売上と患者さんのために使うべき貴重な資源です。申告書作成に費やす時間を本業に使った方が、税理士報酬を上回る価値を生むケースがほとんどです。

まとめ

調剤薬局の法人税申告は、消費税の課税売上割合・医薬品の棚卸・未収調剤報酬など、一般の会社よりも論点が多く難易度の高い分野です。
AIに聞きながら作っても、知識がなければ「何を聞くべきか」がわからず、誤りは残ったままです。
そして「提出できたからOK」ではなく、数年後の税務調査で発覚した時点では取り返しがつきません。

調剤薬局でいうと、薬剤師の資格がない人間が一生懸命薬剤について調べ、YouTubeをみてAIを駆使しても、資格者である薬剤師の先生には敵わないということと同じです。

その時間を薬局経営に使い、申告は調剤薬局に詳しい専門家に任せる。
これが結果的に最も合理的な選択だと私たちは考えています。

「決算だけスポットでお願いしたい」「顧問料がどのくらいか知りたい」という先生は、お気軽にご相談ください。

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