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調剤薬局の在庫管理と税務処理|棚卸・評価・廃棄の実務ポイントを税理士が解説

調剤薬局の経営において、在庫管理は利益を左右する重要なポイントです。
在庫は「持っているだけで安心」な反面、管理を誤ると 資金繰り悪化・税務リスク に直結します。

本記事では、
実務面(現場運用)税務面(決算・申告) の両方から、在庫管理の最適化について解説します。

 調剤薬局の在庫管理が難しい理由

調剤薬局の在庫には、他業種にはない特徴があります。

  • 医薬品ごとに 使用期限 がある

  • 薬価改定により 評価額が変動 する

  • 処方内容に左右され、需要予測が難しい

  • 高額薬剤が多く、少量でも金額が大きい

このため
「在庫はあるのにお金がない」
という状況が起こりやすくなります。

実務面:適正在庫を維持するための考え方

在庫は「回転率」で見る

在庫量そのものではなく、在庫回転率 が重要です。

  • 回転率が低い
    → 売れ残り・期限切れ・廃棄リスク

  • 回転率が高すぎる
    → 欠品・緊急発注による仕入単価上昇

目安

  • 定番薬:安定供給できる最小限

  • 高額薬:原則スポット対応+在庫最小化

高額薬剤は個別管理する

高額薬剤を他の在庫と一括管理すると、問題が見えにくくなります。

  • 高額薬剤は リスト化

  • 処方予定・使用実績と突合

  • 使用後は速やかに在庫確認

これだけでも、キャッシュフローは大きく改善します。

廃棄・返品ルールを明確にする

  • 使用期限切れ

  • 破損・品質劣化

  • 処方変更による不要在庫

これらを
「なんとなく処理」していると、会計処理が曖昧になります。

誰が・いつ・どの基準で判断するか
を決めておくことが重要です。

税務面:棚卸資産としての正しい扱い

決算時の在庫は「棚卸資産」

決算日時点で残っている医薬品は、
すべて棚卸資産(在庫) となります。

  • 仕入時点では経費にならない

  • 販売・使用された時点で経費化

この考え方を誤ると、
利益が実態よりも少なく(または多く)見える ことになります。

在庫評価の基本

原則として、調剤薬局では

  • 最終仕入原価法
    が用いられるケースが多いです。

つまり
「期末時点での直近の仕入単価 × 数量」
で評価します。

使用期限切れ・陳腐化した在庫の扱い

使用期限切れや明らかに使用不能な医薬品は、
一定の条件を満たせば 評価減・廃棄損 として処理できます。

ポイントは以下です。

  • 実際に廃棄していること

  • 廃棄記録が残っていること

  • 恣意的な評価減ではないこと

写真・廃棄記録・一覧表などを残しておくと、税務上も安全です。

在庫管理と資金繰りの関係

在庫は「資産」ですが、現金ではありません

  • 在庫が増える
    → 仕入代金の支払いが先行
    → 現金が減る

特に調剤薬局では、

  • 薬価差益が小さい

  • 保険請求の入金までタイムラグがある

という構造上、
在庫過多=資金繰り悪化 につながりやすくなります。

会計・税務と連動した在庫管理が重要

理想的なのは、

  • 現場:在庫回転・期限管理

  • 経理:在庫金額・評価管理

  • 税務:適正な利益計算

が連動している状態です。

在庫管理を
「現場だけの問題」
「決算のときだけの作業」
にしてしまうと、経営判断が遅れます。

税理士から見た実務上のアドバイス

調剤薬局でよくあるのが、

  • 在庫は毎年「だいたい同じ」

  • 金額が合わないので調整している

  • 廃棄はしているが記録がない

というケースです。

これは、
税務調査で必ず確認されるポイント でもあります。

日常の在庫管理を少し整えるだけで、

  • 利益が正確になる

  • 税務リスクが下がる

  • 資金繰りが安定する

という効果が期待できます。

まとめ

  • 在庫管理は「利益」と「資金繰り」の両方に直結

  • 調剤薬局特有の事情を踏まえた管理が必要

  • 実務と税務を切り離さずに考えることが重要

在庫管理を見直したい、
決算時の在庫処理に不安がある、
という場合は、早めの整理が結果的に負担を減らします。

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