調剤薬局を個人でスタートする場合の税務上の注意点

調剤薬局を開業するとき、法人化ではなく個人事業主としてスタートするケースも多くあります。個人開業は手続きが比較的シンプルですが、届出や申告、会計処理に関して注意すべき点があります。この記事では、調剤薬局を個人で始める際の税務上の注意点を税理士の視点から解説します。
1. 開業届と青色申告承認申請書の提出
調剤薬局を個人事業として始める場合、まず税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。あわせて、節税メリットの大きい青色申告承認申請書も提出しましょう。
提出期限は原則として開業から2か月以内です。これにより、青色申告特別控除や家族への給与の経費算入などが可能となります。
2. 確定申告の時期と消費税の扱い
個人事業主は毎年2月16日~3月15日に所得税の確定申告を行います。
また、調剤薬局の場合は以下の点に注意が必要です。
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保険診療報酬は非課税売上
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OTC販売や雑収入は課税売上
売上規模が一定額を超えると、翌々年から消費税の納税義務が発生します。
3. 保険診療報酬の「月ずれ」と源泉徴収
調剤薬局の売上計上で特に注意すべきなのは、診療報酬の入金が月ずれになる点です。
例:8月分の診療報酬 → 10月に入金
しかし、会計上は入金月ではなく提供月(8月分は8月の売上)で計上する必要があります。
また、診療報酬には源泉所得税が控除されて入金されるため、通帳の金額だけで判断すると誤りやすいので注意しましょう。
4. 税理士に依頼するタイミング
「個人だから自分でできるのでは?」と考える方も多いですが、以下のようなケースでは税理士への相談を検討しましょう。
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開業時の資金繰りや融資計画を立てたいとき
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青色申告・消費税の有利な方法を選びたいとき
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会計ソフトやレセコンの連携に不安があるとき
一方で、少額規模でスタートする場合は、開業初年度は自分で記帳・申告することも十分可能です。
ただし、調剤薬局の場合は社会保険支払基金からの収入について源泉所得税が差し引かれるなど、他の個人事業に比べて難易度が高くなります。そのため、基本的には税理士に依頼する方が安心です。
もっとも、ご自身で処理を行っている薬局経営者の方も実際にいますし、事業規模が拡大して経理が複雑になってから税理士に依頼する方法もあります。
5. クラウド会計でやる場合のポイント
自分で会計・申告を行う場合は、クラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワード)を使うと便利です。銀行やクレジットカードと連携して自動仕訳が可能になるため、入力作業を大幅に減らせます。
ただし、消費税や節税に関する判断は難しい場合があるため、不安があればスポットで税理士に確認するのがおすすめです。
まとめ
調剤薬局を個人でスタートする際には、
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開業届・青色申告承認申請の提出
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確定申告は毎年2~3月
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売上計上は「月ずれ」に注意
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保険診療報酬は源泉控除あり
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少額規模なら自分で申告も可能だが、調剤薬局は複雑なため税理士に依頼するのが安心
といった点を押さえることが重要です。