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調剤薬局と簡易課税制度 ― メリット・デメリットの整理

調剤薬局の経営において、消費税は無視できない重要なテーマです。
特に「簡易課税制度」を選択すべきかどうかは、薬局の売上構成や経費の状況によって結果が大きく変わります。

本記事では、調剤薬局における簡易課税の仕組みと有利・不利になるケースを整理し、判断のためのチェックリストを用意しました。

簡易課税制度とは?

本来、消費税の納税額は以下の計算式で算出します。これを「原則課税」と呼びます。

課税売上に係る消費税 - 課税仕入に係る消費税 = 納付税額

一方、簡易課税制度では「仕入控除税額」を実際の仕入額に基づかず、業種ごとに定められたみなし仕入率を用いて計算します。

👉 調剤薬局は主に「第2種事業」に分類され、みなし仕入率は80%とされています。

調剤薬局の売上構成と簡易課税

  • 保険調剤(非課税売上)
     消費税の対象外。原則課税でも簡易課税でも影響なし。

  • OTC医薬品・雑貨販売(課税売上)
     消費税の対象。簡易課税での計算に直結。

👉 したがって、薬局全体の売上が保険調剤主体で、課税売上がごくわずかな場合は、簡易課税を選んでも大きな節税効果は見込めません。

簡易課税が有利になるケース

  • OTC販売が多く、課税売上比率が高い薬局

  • 仕入や経費で消費税の支払いが少ない(例:仕入先が医薬品卸のみで固定資産購入が少ない)

  • 開業初期で課税仕入が少ない場合

👉 このような場合、みなし仕入率80%により、実際より控除額が大きく計算され、節税効果が出る可能性があります。

簡易課税が不利になるケース

  • 改装や機器購入など、大きな課税仕入が予定されている薬局

  • 福利厚生費や備品購入など、日常的に課税仕入が多い薬局

  • そもそも課税売上の割合が小さい薬局

👉 原則課税なら控除できる仕入消費税が、簡易課税では「みなし計算」により切り捨てられるため、不利になることがあります。

還付は受けられない点に注意

原則課税では設備投資などで消費税の還付を受けられるケースがありますが、簡易課税では還付は不可です。
また、一度選択すると最低2年間は変更できないため、先を見越した判断が必要です。

チェックリスト:簡易課税が有利かどうかの目安

以下の項目に「はい」が多いほど、簡易課税が有利になる可能性があります。

  • OTC医薬品や雑貨の売上が全体の売上の20%以上ある

  • 医薬品卸以外の仕入が少ない

  • 固定資産の購入や改装の予定が当面ない

  • 福利厚生費や備品購入などの課税仕入が少ない

  • 開業して間もなく、課税仕入が少ない

👉 チェックが少ない場合は、原則課税の方が有利な可能性が高いです。

まとめ

  • 調剤薬局の大部分の売上(保険調剤)は非課税であるため、簡易課税を選んでも節税効果は限定的。

  • ただし、OTC販売比率が高い薬局や仕入が少ない薬局では簡易課税が有利になる可能性あり。

  • 選択の際には「今後の設備投資予定」「課税売上比率」「仕入の実態」を踏まえてシミュレーションすることが重要。

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